2007年11月30日金曜日

輸血はどれほど安全かーその2

免疫機能

手術後の生存率には、輸血をした場合としなかった場合で明らかな相違が見られることをさまざまな調査結果が示している。「日本消化器外科学会雑誌」も次のように述べている。

『1983年から1988年までの間に教室で切除を行った胃癌422例を周手術期(術前・術中・術後)に輸血を行わなかった非輪血群(226例)、1,000ml未満の輸血を行った1,000ml未満群(105例)、および1,000ml以上の輸血を行った1,000ml以上群(91例)の3群に分け、周手術期の輸血が胃癌の生存率におよぼす影響について検討した。5年累積生存率は80.5%,46.4%,32.6%の順となり、各群の間に有意差を認め、輸血量の多い症例ほど生存率は不良であった。』 

輸血を受けると免疫力が低下し、それによってさまざまな感染症にかかりやすくなったり、回復が遅れたりするのである。

組織適合性のない2者間で輸血が行われた場合に、輸血血液に混入したドナーのリンパ球が受血者を非自己と認識し受血者体内で増殖して拒絶反応を示すことがある。これに伴って生じる病態を輸血後GVHDという。輸血は一種の臓器移植であり、臓器移植には拒絶反応が伴う。普通は患者の免疫機構が、移植された臓器を攻撃するのに対して、輸血の場合は輸血した血液が患者の全身を攻撃する状態となり、必ず死に至る。輸血後GVHDは家族や親族からの輸血の場合や、新鮮な血液の場合に発症しやすいことも一般には知られていない。血液型の分類法にはさまざまな種類があり、一般に知られているように、ABO型やRh型が合致すれば輸血しても問題がないという訳ではないのである。血は命を維持するために、免疫機能を含め、極めて複雑な働きをしており、その働きの全てが理解されている訳ではない。輸血を行った場合、そうした働きが逆に命取りとなることがあるのである。

2007年11月27日付サイエンスデイリー誌は、ブリストル大学およびブリストル心臓研究所による調査の結果、赤血球の輸血によって脳卒中や心臓発作の危険性が明らかに増加していると伝えている。赤血球が酸素の運搬を改善するという従来の常識とは逆に、重要な器官に必要な酸素が供給されていないことが原因となっているとも述べている。
http://www.sciencedaily.com/releases/2007/11/071126201333.htm

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

興味深く拝見しました。常識に切り込む姿勢に共感します。

ところで輸血は、出血量に依って行われると考えられませんでしょうか。
出血量は、多くの場合、症例の重さに相関するのではないでしょうか。
つまり、輸血量は、症例の重さと相関があるように思えるのですが、いかがでしょうか。